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『ワンパンマン』を哲学する④:無免ライダーの正義とは?


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ワンパンマン』に登場するヒーローたちの中でも高い人気を誇る無免ライダー。 名前の通り、自転車で現場へ駆けつける。

元々は免許を持っていたそうだが、現場へ急ぎすぎてしまうため、スピード違反で繰り返し検挙され、免許を失ったとの一説がある。

C級ヒーローであり戦闘能力は決して高くないが、彼のヒーロー活動への志は崇高なものだ。特に深海王戦の彼の名言に胸を強く打たれた読者も多いのではないだろうか。今回はそんな無免ライダーの『正義』について解析していきたい。

 

無免ライダーの正義とは一体?

無免ライダーは、どんな強敵だろうと決して臆することなく、立ち向かい続ける。しかし、決して彼は強くない。むしろ一般人と大差ないのが事実だ。それにも関わらず彼が怪人に立ち向かい続ける理由は一体何か。

彼の『正義』を知るためには、まず深海王戦の彼の名言を分析する必要がある。

 

深海王戦の無免ライダーの名言

深海王戦あらすじ

深海王とは災害レベル鬼の怪人である。

A級ヒーローのスティンガーとイナズマックスを瞬殺し、救援に駆けつけたS級ヒーローのぷりぷりプリズナーも激しい肉弾戦を繰り広げるが、力で押し切る。

さらに自称最強の忍者のソニックとの戦いでも、はじめこそスピードで翻弄されるも徐々にソニックを圧倒する。

ソニックを敗走に追いやった深海王は、一般市民が逃げ込む避難所を強襲。避難所に逃げ込んでいたヒーロー4人をなんなく倒し、一般市民に襲いかかろうとしたときにS級ヒーロー・ジェノス登場。

得意のマシンガンブローや焼却で善戦するも、深海王の不意打ちに見舞われ、敗戦。

もう対抗するヒーローもいない。豪雨が響き渡る中、市民は絶望に打ちひがれているところに。
                                
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深海王との決戦に臨む。

 

無免ライダーの正義

しかしながら実力の差は歴然。深海王が一方的に弄ぶように無免ライダーに攻撃を続ける。

その際の名言がこちら。

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無免ヒーローはB級で通用しないことは重々承知の様子。それどころか深海王に勝てないこともしっかり分かってる様子だ。

しかし、「それでも俺しかいないんだ」というのはどういうことなのか。

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                    「勝てる勝てないじゃなく」                              
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 「ここで俺はお前に立ち向かわなくちゃいけないんだ」

何度見ても涙腺がノックされる場面だ。

 

そこで考えてみよう。

なぜ深海王には勝てないと分かっていながら、立ち向かわなきゃいけないのだろうか。

勝てないのならば、退く方が賢明だろう。

しかし、その「立ち向かう」ということに 彼の正義が存在するのだ。

そして「俺しかいないんだ」

というのは、この空間に深海王に立ち向かう勇気を持っているのが俺しかいない。ということだろう。

『勝てないと分かっていても、1人でも立ち向かう』

これが彼の正義だ。

この正義を理解するためにはもう少し掘り下げる必要がある。絶望的な状況でも敵に立ち向かうというのはどんな意義があるのか。

 

 

絶望の淵に立つ人々の反応

深海王戦の群衆の反応

無免ライダーは、実力差が歴然としているにも関わらずあの時深海王に恐れることなく立ち向かったのか。

その理由は一体どこか。

無免ライダーは『立ち向かうこと』『諦めないこと』の重要性をしっかり理解している。

もしもあの時、無免ライダーが立ち向かってくれていなかったらどうなっていたか。

間違いなく深海王は市民を殺し始めていたことだろう。

たとえ絶望的な状況でも、人々にとって無免ライダーが一寸の光となったことは明らかだ。

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勝てはしないと誰もが分かっているのだ。

しかし、そこに立ち向かう者がいるだけで勝つ可能性はゼロではなくなる。

人々はそこに希望を見出す。大きな声を出して無免ライダーを応援する。「生きたい」という生命の息吹を再び燃やす。市民たちに一体感が生まれる。

 

『立ち向かい続ける限り負けることはない。立ち向かう続ける者がいる限り人々は希望を持つことができる』

 

これこそが無免ライダーの正義の答えだ。

無免ライダーはこの正義のもとに、市民に生きたいという希望を捨てさせないため、深海王に挑み続けた。

だからこその「俺しかいないんだ」なのである。

無免ライダーの正義には、筆者も大きく心をうたれた。

 

スイリューの反応 


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一流の武術家が集う大会「スーパーファイト」で、優勝候補だったスイリュー。

勝戦の後で会場が怪人達に襲撃され、武術家達が怪人達に必死に抵抗する。スイリューも怪人を次々と倒していくが、災害レベル竜のゴウケツによって戦闘不能の状態まで追い込まれる。

あれだけスーパーファイトでは無類の強さを誇ったスイリューだが、ゴウケツには手も足も出ない様子。

いままで負け知らずだったスイリュウがプライドを捨てて助けを求め、叫ぶ。


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しかし、助けは来ない。

このような絶望的な状況でスイリュウは悟ります。


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「人は暗闇に叩き落とされたとき、光を求めるものなんだ。その光はどんなにか細くても、か弱くてもいい。ただそこにあるだけで。」

まさに無免ライダーの正義そのものである。

ヒーローとはこの光なのである。

もはやスイリューのこの悟りは無免ライダーを指していると言っても過言ではないだろう。

ヒーローが敵に立ち向かうことで、だれかが希望をだくことが出来るのだ。

 

 

まとめ

以上、深海王戦の無免ライダーに着目し、無免ライダーの正義について解析してきた。

『立ち向かい続ける限り負けることはない。立ち向かう続ける者がいる限り人々は希望を持つことができる』

これが無免ライダーの正義で、だからこそ無免ライダーは弱くてもどんな相手にも怯まず立ち向かい続ける。ヒーローのお手本のような存在だ。

そしてスイリューの悟りをまとめると

『どんな絶望的な状況でも人間は希望を求める』という解釈になる。

これはワンパンマンの世界だけでなく、われわれの社会にも通ずることであろう。 

光の差さない真っ暗闇ではわれわれは生きていけない。大げさなことではなく、だからこそあなたがもしスイリュウのような人を見かけたら積極的に手を差し伸べて欲しい。